映画感想【何者】あらゆる欲の意味って
いい小説というのは、なるべく多くの人に「この登場人物の気持ちがわかるのは、私しかいない」と思わせられるもののことだ。
どこでだったか忘れましたが、上記の様な言葉を聞いて、非常に共感したことを覚えています。
もちろん、映画にも同じことが言えるわけで。
映画「何者」もそういった意味で素晴らしい作品でした。
「主人公はは自分だ。コイツの気持ちがわかるのは自分しかいない」と思わせられてしまいました。
そして、私と同じように思った人が山ほどいることでしょう。
就活という特定の、派手とはいい難い内容のテーマで、でもこれだけ売れているということですから。
というわけで、今回は映画「何者」の感想を書いていきたいと思います。
あらすじ
就職活動の情報交換のため集まった大学生の拓人(佐藤健)、光太郎(菅田将暉)、瑞月(有村架純)、理香(二階堂ふみ)、隆良(岡田将生)。海外ボランティアの経験や業界の人脈などさまざまな手段を用いて、就活に臨んでいた。自分が何者かを模索する彼らはそれぞれの思いや悩みをSNSで発信するが、いつしか互いに嫌悪感や苛立ちを覚えるようになる。そしてついに内定を決めた人物が出てくると、抑えられていた嫉妬や本音が噴きだし……。
2016年10月に公開された映画ですね。
AmazonのPrime Videoでも見られますね。
今だとプライム会員さんは特典で無料で見られますよ!
筆者としては、非常に好きな映画でした。
ハマってしまって、すぐに小説も読みました。
小説も、さすが原作です。面白かったです。そら直木賞取るわ。
ラストシーンがすこーしだけ違うんですが、小説の方も良かったですね。泣きました。
この映画は、「内定」を勝ち取れるかどうかという、「就活」が目的の映画ではないです。
自分が「何者」であるかを、嫌でも見つめなければならないそのタイミングが、「就活」であったという人たちのお話です。
「青春が終わる、人生が始まる」
予告で、サブタイトルのように出ていた言葉が、この映画を本当に端的に表してますよ。
この辺から、軽ーいネタバレ含みます。
まったく予備知識無しで映画を楽しみたい方はご遠慮ください。
観終わってから、読んでね♡
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いや〜、居心地の悪い映画でしたね。
大学生特有の、自意識の行き場所を探しているあの感じ。痛々しいですね。
特に筆者は、理系で女学生がほとんどいませんでした。
そうなると、どうしても他の学生との薄い距離のようなものは出来たわけで。性格もありますけど。
この映画の主人公拓人のような、ちょっと離れた位置にいきやすい立場でした。性格もありますけど。
「女の人間関係はドロドロしている」と巷ではよく言われていますが、
「男だってそんな変わらんよ」と大学時代思ったこともしばしばでした。
学生間で仲良くしてるように見えて、お互いマウンティングしあっている。
意識的にしろ、無意識にしろ。
これは学生あるあるなんじゃないんですかね。男女とか、学歴とか関係なく。
私はSNSはしてないんですが、人のは見てます。
ご存知の通り、ブログをやってます。
ネット等に打ち込んではいないですが、拓人のように人を分析して悦に入ることは、ありました。今もあるかな。認めたくないけど。
ですので、そんな拓人の様子をカメラでずーっと追っているこの映画は、見てて辛いものがありました。
自分のことを、覗かれているような気がして。「こんなんもはや盗撮やん」と。
それこそ、ニーチェの名言の、「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」を、2時間永遠にこちらに訴え続ける映画でした。意地悪ですね。
それだけ苦しい映画でしたが、ラストの終わり方は良かったですね。
拓人のことを、私(観客)のことを、ずーっといじめ続ける映画でしたが、ラストで少し救われました。
この映画って、拓人のような人たちを痛烈に非難している映画ではないんですよね。
最後には、そういった人間の持つ「醜さ」もまるごとすべて受け入れる、愛する、非常に懐の深い映画のように感じました。
三浦大輔監督の作品だったんですね。意外でした。
セクシーな映画作品が多いイメージだったもんで。
「娼年」とか。「愛の渦」とか。
観てないのでなんとも言えないんですが、勝手な予告のイメージで。
「何者」はセクシー要素が全くなかったですもの。
テーマが「就活」ですからね。当たり前といえば当たり前か。
個人的には、セクシー系の映画ってあんまり好きじゃないんですよね。
ただただ女優の露出や進出のために、濡れ場シーンを無理やりぶっこむ映画とかも多いので。
三浦監督に関しても、失礼ながら、そんな監督かなと思ってました。
でも、この「何者」で、イメージ変わりました。ホントもったいないことした。
今まで、食わず嫌いしてましたが、今後注目していきたい監督となりました。
上の2つの映画も観てみよう。
原作者の朝井リョウさんと、主演の佐藤健さんは元々仲がいいらしいです。
佐藤さんの演技も光ってました。朝井さんの配役でしょうか。
あれだけ大人気の俳優さんでも、この映画の思いって共感できるんですかね。
逆に、共感できるからこそ、これだけ人気がでるのかもしれませんね。
少なくとも、一切共感できなかったら、あの演技はできないと思います。
個人的には、夜に号泣して走るあのシーンが、辛くて好きでした。
ホントに、最悪最低の夜ですね。同情しました。
でも、好きな人、しかも振られた人の前で、あの号泣顔を見せられる拓人は、実はものすごく強いんじゃないかとも思いました。
とっても承認欲求が強いってだけで。
私も承認欲求は強いです。
というか、多分ブロガーって、承認欲求の塊ですよね。
でも、素晴らしいブロガーさんももちろんたくさんいます。
何がいいたいかと言うと、承認欲求って、というか他の欲にしたって。
結局のところ、使い方次第なんだってことです。
拓人も、醜いところも含めて、すべて使って、前に進んでほしいなと思います。
そうして自分自身も頑張ろうと、前を向かせてくれた作品でした。
だらだらと書いてしまいましたが、
最後に、一つだけ気になったところを。
山田孝之さんの役が要らなかったかなと思います。
何でこいつだけいい思いしてんだよ!という嫉妬ですね。
かっこよすぎて気に食わない。
では今日はここまで!
読んでいただき、本当にありがとうございました!